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【2026年版】退職金の手続きを税理士が解説|会社がやること・従業員がやること、税額の計算、令和8年から変わった源泉徴収票の提出と10年ルール

退職金を支給するとき、会社は「退職所得の受給に関する申告書」を受け取り、所得税と住民税を計算して源泉徴収し、期限までに納付して、源泉徴収票と法定調書を提出します。手続きの数は多くありませんが、期限がそれぞれ異なり、令和8年からは源泉徴収票の提出範囲が広がるなど取扱いも変わりました。この記事では、退職金にかかる税金の計算方法から、会社側と従業員側それぞれの手続き、死亡退職金の扱い、役員退職金の注意点までを、2026年時点の制度にもとづいて解説します。
この記事のポイントは次の3点です。
- 退職金の税額は「(退職金-退職所得控除額)×2分の1」に税率を掛けて計算する。勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円が控除される
- 令和8年1月1日以後に支払うべき退職金からは、役員だけでなく全員分の退職所得の源泉徴収票を税務署に提出する。一方で、市区町村への特別徴収票の提出は当分の間省略できる
- 確定拠出年金の老齢一時金を先に受け取っている場合、退職金の退職所得控除が調整される期間が、これまでの前年以前4年内から前年以前9年内に広がった
1. 退職金にかかる税金の基本
1.1 退職所得は分離課税
退職金は「退職所得」として、給与所得など他の所得と分離して課税されます。長年の勤務に対する報償という性格から、退職所得控除が設けられ、さらに控除後の金額を2分の1にしてから税率を掛けるため、同じ金額の給与と比べて税負担がかなり軽くなります。
退職所得の金額は次の式で計算します。
(退職金の額-退職所得控除額)×2分の1=退職所得の金額
この退職所得の金額に所得税の税率(5%から45%の超過累進税率)を掛けたものが所得税額で、これに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わります。住民税は一律10%です。
1.2 退職所得控除額
退職所得控除額は勤続年数で決まります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 計算例 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) | 勤続10年2か月→11年→40万円×11年=440万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) | 勤続25年→800万円+70万円×5年=1,150万円 |
| 共通の注意 | 勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げる | 勤続24年1か月→25年 |
| 障害退職の場合 | 上記の金額に100万円を加算 | 勤続25年で障害退職→1,250万円 |

勤続年数に1年未満の端数があるときは切り上げます。勤続10年2か月なら11年として計算するため、40万円×11年=440万円が控除額です。計算した金額が80万円に満たない場合は80万円となり、障害者になったことが直接の原因で退職した場合は100万円が加算されます。
1.3 2分の1にならない場合がある
勤続年数が短い場合は、2分の1にする計算が制限されます。
| 区分 | 対象者 | 退職所得の金額の計算 |
|---|---|---|
| 一般退職手当等 | 下記以外 | (退職金-退職所得控除額)×2分の1 |
| 特定役員退職手当等 | 役員等としての勤続年数が5年以下の人が受け取る、その役員等勤続年数に対応する退職金 | 退職金-退職所得控除額(2分の1にしない) |
| 短期退職手当等 | 役員等以外として勤務した期間で計算した勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金(特定役員退職手当等を除く) | 控除後の金額が300万円以下:×2分の1/300万円超:150万円+{退職金-(300万円+退職所得控除額)} |
役員等としての勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金(特定役員退職手当等)は、控除後の金額をそのまま退職所得とします。役員等以外で勤続年数が5年以下の人が受け取る退職金(短期退職手当等)は、控除後の金額のうち300万円までは2分の1にできますが、300万円を超える部分は2分の1になりません。短期退職手当等の取扱いは令和4年1月1日以後に支払う退職金から適用されています。
1.4 申告書を出すかどうかで源泉徴収が変わる
| 項目 | 支給日までに提出した場合 | 提出しなかった場合 |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 退職所得控除と2分の1計算を反映した税額を源泉徴収 | 退職金の額×20.42%を源泉徴収 |
| 住民税 | 一律10%(提出の有無を問わず同じ) | 一律10% |
| 本人の確定申告 | 原則として不要 | 必要(確定申告で精算する。多くは還付) |
| 申告書の提出先 | 会社が保管(税務署長から求められたときに提出) | ― |
| 保存期間 | 7年間。確定拠出年金の老齢一時金に係るものは10年間(令和8年1月1日以後に支払を受けるべきもの) | ― |
| 同じ年に他社からも退職金を受けている場合 | その退職金の源泉徴収票を申告書に添付してもらう | ― |
従業員が支給日までに「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、会社が退職所得控除を反映した正しい税額を計算して源泉徴収するため、原則として本人の確定申告は不要です。提出がない場合は、退職金の額に一律20.42%を掛けた所得税額を源泉徴収することになり、本人が確定申告をして精算します。住民税は申告書の提出の有無にかかわらず10%です。
2. 会社側の手続き
2.1 手続きの全体像
| タイミング | 手続き | 期限・提出先 |
|---|---|---|
| 支給日まで | 「退職所得の受給に関する申告書」を本人から受け取る | 会社が保管(税務署への提出は不要) |
| 支給時 | 所得税・復興特別所得税と住民税を計算して源泉徴収・特別徴収 | ― |
| 支給月の翌月10日 | 源泉所得税の納付(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書) | 所轄税務署。納期の特例の場合は7月10日・翌年1月20日 |
| 支給月の翌月10日 | 住民税(退職所得分)の納入と納入申告書の提出 | その年1月1日現在の住所地の市区町村 |
| 退職した月の翌月10日 | 給与所得者異動届出書の提出(給与から住民税を特別徴収していた場合) | 市区町村 |
| 退職後1か月以内 | 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票を本人に交付 | 本人(全員必要。電子交付も可) |
| 退職後1か月以内 | 退職所得の源泉徴収票を税務署へ提出 | 所轄税務署(令和8年1月1日以後の支払分は全員。翌年1月31日までのまとめ提出も可) |
| 翌年1月31日 | 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出 | 所轄税務署 |
| 退職日の翌日から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 | 年金事務所または健康保険組合 |
| 退職日の翌日から10日以内 | 雇用保険 被保険者資格喪失届・離職証明書 | ハローワーク |

退職金の支給が決まってから法定調書の提出まで、期限の異なる手続きが続きます。支給月の翌月10日という期限が所得税と住民税の両方にあり、源泉徴収票の交付は退職後1か月以内です。
2.2 「退職所得の受給に関する申告書」を受け取る
支給日までに本人から提出してもらいます。この申告書は住民税の「退職所得申告書」を兼ねているため、1枚で両方の手続きに使えます。税務署や市区町村に提出する必要はなく、会社が保管し、税務署長から求められたときに提出します。保存期間は7年間ですが、確定拠出年金の老齢一時金にかかる申告書については、令和8年1月1日以後に支払を受けるべきものから10年間に延長されました。
本人が同じ年に他の会社からも退職金を受け取っている場合は、その源泉徴収票を申告書に添付してもらいます。
2.3 所得税を計算して源泉徴収し、納付する
計算した所得税と復興特別所得税は、「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」に記載して、支給日の翌月10日までに納付します。納期の特例(給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が対象)の承認を受けている場合は、1月から6月の支給分を7月10日まで、7月から12月の支給分を翌年1月20日までにまとめて納付します。
2.4 住民税を計算して特別徴収し、納入する
住民税は通常、前年の所得に対して翌年課税されますが、退職所得は例外で、支払われた年に他の所得と分離して課税されます。会社が退職金の支給時に特別徴収し、支給月の翌月10日までに、その年の1月1日現在の住所地の市区町村へ納入します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税方式 | 現年分離課税(支払われた年に他の所得と分離して課税) |
| 税率 | 合計10%(市区町村民税6%・道府県民税4%) |
| 計算のもと | 所得税と同じ課税退職所得金額(1,000円未満切捨て) |
| 税額の端数 | 算出した税額の100円未満は切捨て |
| 徴収方法 | 会社が退職金の支給時に特別徴収 |
| 納入期限 | 支給月の翌月10日までに、その年1月1日現在の住所地の市区町村へ納入 |
| 提出書類 | 退職所得に係る納入申告書(納入書に付いている様式) |
| 計算例 | 課税退職所得425万円→市区町村民税255,000円+道府県民税170,000円=425,000円 |
なお、給与から住民税を特別徴収していた従業員が退職する場合は、別途「給与所得者異動届出書」を退職した月の翌月10日までに市区町村へ提出します。退職日が1月1日から4月30日までの場合は、5月までの住民税を最後の給与や退職金からまとめて徴収して納入します。6月1日から12月31日までに退職する場合は、原則として残りを本人が普通徴収で納めますが、本人が申し出れば一括徴収もできます。
2.5 源泉徴収票・特別徴収票を作成する
この帳票は、本人交付用・税務署提出用・市区町村提出用を兼ねており、正式には「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」といいます。令和8年から提出範囲が変わりました。
| 提出先 | 令和7年12月31日以前に支払うべき退職金 | 令和8年1月1日以後に支払うべき退職金 |
|---|---|---|
| 本人 | 退職後1か月以内に全員へ交付 | 同左(変更なし) |
| 税務署 | 受給者が法人の役員(相談役・顧問を含む)の場合のみ提出 | 全ての居住者について提出 |
| 市区町村(特別徴収票) | 受給者が法人の役員の場合のみ提出 | eLTAXによる簡便な提出方法が整備されるまでの間、提出を省略できる |
| 提出期限 | 退職後1か月以内(税務署分はその年の退職者分をまとめて翌年1月31日までとしても可) | 同左 |
| マイナンバー | 税務署提出分には記載。本人交付分には記載しない | 同左 |
令和7年12月31日以前に支払うべき退職金については、税務署と市区町村への提出は受給者が法人の役員(相談役や顧問を含む)である場合に限られていました。令和8年1月1日以後に支払うべき退職金からは、全ての居住者について退職所得の源泉徴収票を税務署へ提出しなければなりません。一方、市区町村へ提出する特別徴収票については、eLTAXによる簡便な提出方法が整備されるまでの間、提出を省略できることとされています。
本人への交付は、従来どおり退職後1か月以内です。これは役員かどうかを問わず全員に必要で、本人の承諾など一定の要件を満たせば電子交付もできます。
2.6 法定調書合計表を提出する
翌年1月31日までに、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を所轄税務署に提出します。退職金を支払った場合は、退職所得の源泉徴収票合計表の欄に人数と支払金額、源泉徴収税額を記載します。税務署へ提出する源泉徴収票は、退職後1か月以内に提出するのが原則ですが、その年に退職した人の分をまとめて翌年1月31日までに提出しても差し支えありません。期限が土日祝日の場合は翌平日となり、令和8年分は令和9年2月1日が期限です。
2.7 社会保険と雇用保険の手続き
退職金そのものには社会保険料も雇用保険料もかかりません。ただし退職に伴い、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届(退職日の翌日から5日以内)と、雇用保険の被保険者資格喪失届・離職証明書(退職日の翌日から10日以内)の提出が必要です。
3. 死亡退職金の場合
従業員が亡くなったことによる退職の場合は、取扱いが大きく変わります。
| 項目 | 死亡後3年以内に支給が確定 | 死亡後3年経過後に支給が確定 |
|---|---|---|
| 課税される税目 | 相続税(相続財産とみなされる) | 所得税(受け取った人の一時所得) |
| 所得税の源泉徴収 | 不要 | 不要(一時所得として本人が申告) |
| 住民税の特別徴収 | 不要 | 不要 |
| 非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | なし |
| 会社が提出する書類 | 退職手当金等受給者別支払調書(受給者ごとの支払金額が100万円超の場合)と同合計表 | 提出不要 |
| 提出期限 | 支払った日の属する月の翌月15日 | ― |
| 退職所得の源泉徴収票 | 提出不要(支払調書に代える) | ― |
死亡後3年以内に支給が確定した退職金は、所得税ではなく相続税の対象になります。この場合、所得税の源泉徴収も住民税の特別徴収も行いません。相続人が受け取る死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。
会社は「退職所得の源泉徴収票」ではなく、相続税法にもとづく「退職手当金等受給者別支払調書」を作成します。受給者ごとの支払金額が100万円を超える場合に提出が必要で、期限は退職手当金等を支払った日の属する月の翌月15日です。
死亡後3年を経過してから支給が確定した退職金は、受け取った人の一時所得となり、相続税の対象にはなりません。
4. 令和8年に変わったこと
| 変更点 | 改正前 | 改正後 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 退職所得の源泉徴収票の税務署への提出範囲 | 受給者が法人の役員の場合のみ | 全ての居住者 | 令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等 |
| 特別徴収票の市区町村への提出 | 役員分を提出 | eLTAXによる簡便な提出方法が整備されるまでの間は省略可 | 令和8年1月1日以後に支払うべき退職所得の特別徴収票 |
| 確定拠出年金の老齢一時金を先に受けた場合の調整期間 | 前年以前4年内 | 前年以前9年内(令和8年1月1日以後に支払を受けた老齢一時金が対象) | 令和8年分以後の所得税 |
| 老齢一時金に係る「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間 | 7年 | 10年 | 令和8年1月1日以後に支払を受けるべき老齢一時金 |

実務に影響が大きいのは、源泉徴収票の提出範囲の拡大です。これまでは従業員への退職金は税務署へ提出する必要がありませんでしたが、令和8年1月1日以後に支払うべき退職金からは全員分の提出が必要になります。給与計算ソフトや法定調書作成ソフトの設定が役員のみになっていないか、年末の法定調書作成前に確認してください。
5. 確定拠出年金の一時金を先に受け取っている場合
企業型確定拠出年金やiDeCoの老齢給付金を一時金で受け取ってから、その後に会社の退職金を受け取る場合、退職所得控除の計算で勤続期間の重複を除く調整が行われます。この調整の対象期間が広がりました。
改正前は、前年以前4年内に他の退職金を受け取っている場合が調整の対象でした。改正後は、会社の退職金を受け取る年の前年以前9年内に老齢一時金(令和8年1月1日以後に支払を受けたものに限ります)を受け取っている場合、前年以前9年内に支払を受けた退職金(令和8年1月1日以後に支払を受けたもの)が調整の対象になります。令和8年1月1日前に支払を受けた退職金は、従来どおり前年以前4年内のものが対象です。この改正は令和8年分以後の所得税について適用されます。
一方、会社の退職金を先に受け取り、後からiDeCoの一時金を受け取る場合は、従来どおり前年以前19年内が調整の対象です。老齢一時金と退職金を受け取る順番と間隔によって税額が変わるため、受給時期を決める前に試算しておくことをおすすめします。
6. 従業員側の手続き
| やること | 内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 「退職所得の受給に関する申告書」を提出する | 会社の所定様式に記入して提出。提出がないと20.42%が源泉徴収され、確定申告が必要になる | 退職金の支給日まで |
| 同じ年に他社から受けた退職金がある場合 | その退職金の源泉徴収票を申告書に添付する | 同上 |
| 支給額・支給日・振込口座を確認する | 退職金規程にもとづく計算方法と支給時期を確認し、振込口座を会社へ伝える | 退職前後 |
| 源泉徴収票を受け取る | 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票を受け取り保管する | 退職後1か月以内 |
| 確定拠出年金の一時金がある場合 | 受け取る順番と時期によって退職所得控除が変わるため、事前に試算する | 受給時期を決める前 |
| 年の途中で退職して再就職しない場合 | 給与について確定申告をすると源泉徴収税額が還付されることがある | 翌年の確定申告期間 |
従業員がすべきことは多くありません。もっとも重要なのは、支給日までに「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出することです。これを忘れると、いったん20.42%の所得税が源泉徴収され、取り戻すには翌年に確定申告が必要になります。
そのほか、退職金規程にもとづく支給額と支給日、振込口座を会社に確認し、退職後1か月以内に受け取る源泉徴収票を保管します。年の途中で退職して再就職しない場合は、退職金とは別に、給与について確定申告をすると源泉徴収税額が還付されることがあります。
7. 役員退職金の実務
役員に退職金を支給する場合は、従業員とは別の論点があります。
| 論点 | 取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 損金算入の時期 | 原則は株主総会の決議等により金額が具体的に確定した日を含む事業年度。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合はその事業年度でも可 | 国税庁タックスアンサーNo.5208 |
| 未払金計上 | 取締役会で内定した金額を損金経理により未払金に計上しても、その時点では損金にできない | 同上 |
| 退職年金として支給する場合 | 年金を支給すべき事業年度の損金。退職時に総額を未払金計上しても損金にできない | 同上 |
| 金額の妥当性 | 不相当に高額な部分は損金不算入。実務では功績倍率法(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率)で算定するが、功績倍率は法令上の数値ではない | 法人税法34条2項、法人税法施行令70条 |
| 分掌変更の場合 | 常勤から非常勤になるなど地位・職務が激変し、実質的に退職と同様の事情にあれば退職給与として扱える。給与のおおむね50%以上の減少は例示であり、これだけで認められるわけではない。代表権を持ったままなど経営上主要な地位を占めていると認められる場合は対象外。否認されると役員賞与として全額損金不算入 | 法人税基本通達9-2-32 |
| 整えておく書類 | 役員退職金規程、株主総会議事録(決議日と金額)、功績倍率の算定根拠 | ― |
| 中小企業退職金共済 | 法人の役員は原則加入できないが、部長・支店長など使用人としての職務を持つ使用人兼務役員は被共済者になれる。掛金は現実に納付した事業年度の損金 | 法人税基本通達9-3-1 |
損金に算入する時期は、原則として株主総会の決議等によって金額が具体的に確定した日を含む事業年度です。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その事業年度の損金にすることも認められます。取締役会で内定した金額を未払金に計上しても、その時点では損金になりません。
金額については、不相当に高額な部分が損金不算入となります。実務では、最終報酬月額に勤続年数と功績倍率を掛ける功績倍率法で算定することが多いのですが、功績倍率は法令で定められた数値ではなく、同業類似法人の支給状況などを踏まえて判断されます。退職金規程を整備し、株主総会の議事録を残しておくことが重要です。
役員を退任せず、常勤から非常勤になるなど分掌変更をした場合でも、地位や職務の内容が激変し実質的に退職したのと同様の事情にあると認められれば、退職給与として取り扱うことができます。国税庁の通達では、分掌変更後の給与がおおむね50%以上減少したことなどが例示されていますが、これは例示のひとつであって、給与が半減すれば必ず認められるという基準ではありません。通達が問うているのは実質的に退職したのと同様の事情にあるかどうかで、代表権を持ったままである場合や、対外的な契約・資金調達の決定に関与し続けている場合など、経営上主要な地位を占めていると認められるときは、給与が半減していても退職給与として扱えません。分掌変更による支給は税務調査で否認されると役員賞与として全額が損金不算入になるため、支給の前に個別の事情を踏まえて判断することをおすすめします。
8. 退職金制度を用意するには
自社に退職金制度がない場合、制度をつくるかどうかは任意です。ただし退職手当の定めをする場合は、就業規則(退職金規程)に適用される労働者の範囲、計算方法、支払方法、支払時期を定める必要があります。
社外に積み立てる仕組みとしては、中小企業退職金共済(中退共)、企業型確定拠出年金、iDeCoプラスなどがあります。中退共の掛金は、現実に納付した事業年度に全額を損金算入できます。法人の役員は原則として加入できませんが、部長や支店長のように使用人としての職務を持つ使用人兼務役員は被共済者になれます。個人事業主自身の退職金にあたるのは小規模企業共済です。
9. よくある質問
9.1 退職金を分割して支給できますか?
退職金規程で分割払いを定めていれば可能です。総額を決めたうえで分割して支払う場合は、分割分も退職所得で、源泉徴収税額は総額で計算した税額を各回の支給額であん分します。一方、退職年金として毎年支給するものは公的年金等に係る雑所得になり、法人の損金算入時期もその年金を支給すべき事業年度になります。
9.2 退職金はいつまでに支払う必要がありますか?
労働基準法に退職金の支払期限の定めはなく、退職金規程で定めた時期によります。多くの会社は退職日から1か月から3か月以内に支給しています。規程で支給時期を定めていない場合、請求があった日から7日以内の支払いを求められることがあるため、規程で明確にしておくことが大切です。
9.3 源泉徴収票を紛失した場合はどうしますか?
支払者である会社に再発行を依頼します。会社は法定調書として保存しているため、再発行が可能です。確定申告では退職所得の源泉徴収票の添付は不要ですが、金額の確認に必要になります。
9.4 退職金に社会保険料はかかりますか?
かかりません。退職金は労働の対償として支払われる報酬や賞与に当たらないため、健康保険・厚生年金保険の保険料の対象外です。雇用保険料もかかりません。
9.5 勤続年数が短い従業員に退職金を支給する場合の注意点は?
勤続5年以下の場合、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分は2分の1課税が適用されません。役員として5年以下であれば、控除後の全額が退職所得になります。想定より税額が大きくなることがあるため、支給前に試算しておくと本人への説明がしやすくなります。

10. まとめ
この記事では、退職金にかかる税金の計算方法と、会社側・従業員側それぞれの手続き、死亡退職金の扱い、令和8年からの変更点、役員退職金の実務までを解説しました。
会社の手続きで押さえるべき期限は3つです。所得税と住民税の納付が支給月の翌月10日、源泉徴収票の本人交付が退職後1か月以内、法定調書合計表の提出が翌年1月31日です。加えて令和8年1月1日以後に支払うべき退職金からは、全員分の源泉徴収票を税務署に提出することになりました。
退職金は金額が大きく、勤続年数の数え方や2分の1課税の可否、確定拠出年金の一時金との関係で税額が変わります。支給前の試算と退職金規程の整備、役員退職金の株主総会決議の証跡づくりまで、まとめてご相談ください。役員退職金の水準は役員報酬の決め方とあわせて検討します。また、退職金は年末調整の対象ではなく、「退職所得の受給に関する申告書」によって支給時に精算します。
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