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【2026年版】事業融資の受け方を税理士が解説|創業時と通常時の違い、日本政策金融公庫と信用保証付き融資、審査で見られる点

事業資金が足りなくなってから動き出すと、選択肢が限られます。融資は申し込みから入金まで1か月前後かかることが多く、決算書と資金繰りの見通しを整えてから相談するかどうかで結果が変わります。この記事では、事業融資の種類、創業時と通常時で審査のどこが違うのか、日本政策金融公庫と信用保証付き融資の使い分け、必要書類、そして借入金の税務上の扱いまでを、2026年時点の制度にもとづいて解説します。
この記事のポイントは次の3点です。
- 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は2024年3月末で廃止され、創業期の資金は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合された。融資限度額は7,200万円で、自己資金の額そのものを要件とする規定はなくなった
- 信用保証付き融資は、信用保証協会が返済を保証する仕組み。協会が金融機関に代位弁済しても借り手の返済義務は消えず、その後は協会へ返済する
- 借入金の元本の返済は経費にならない。経費になるのは支払利息だけで、利益が出ていないと返済原資が足りなくなる
1. 事業融資にはどんな種類があるか
| 種類 | 貸す側 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 日本政策金融公庫の融資 | 政府系金融機関 | 創業期や小規模事業者向けの制度が整っている。無担保・無保証人で使える制度もある | 創業時、設備投資、実績が少ない時期 |
| 信用保証付き融資 | 銀行・信用金庫など(信用保証協会が保証) | 実績が少なくても金融機関が貸しやすい。信用保証料が別途かかる | 創業期から成長期まで幅広く |
| プロパー融資 | 銀行・信用金庫など | 保証協会を使わず金融機関が自らリスクを負うため、審査は厳しい。保証料は不要で、金利は信用力や取引状況で決まる | 取引実績と財務内容が整ってから |
| 制度融資 | 自治体・金融機関・信用保証協会の連携 | 自治体が保証料や利子の一部を補助する場合がある。手続きに時間がかかる | 負担を抑えたい創業期・小規模事業者 |
| ビジネスローン・ファクタリング等 | ノンバンクなど | 審査が早い一方で、金利や手数料の負担が大きい | 一時的なつなぎ。常用は資金繰りを悪化させる |

中小企業や個人事業主が使う融資は、大きく4つに分かれます。政府系金融機関である日本政策金融公庫の融資、信用保証協会の保証を付けて民間金融機関から借りる信用保証付き融資、金融機関が自らリスクを負って貸すプロパー融資、自治体が金融機関と信用保証協会と連携して行う制度融資です。
創業期や実績が少ない段階では、公庫の融資と信用保証付き融資、制度融資が中心になります。プロパー融資は取引実績と財務内容が評価されてから広がっていくのが一般的です。
2. 創業時と通常時で何が違うのか
| 項目 | 創業時 | 通常時 |
|---|---|---|
| 評価の中心 | 事業計画の具体性と実現性 | 決算書(直近2〜3期)の内容 |
| 見られる材料 | 経営者の経験、自己資金の準備過程、売上根拠、資金繰り計画 | 売上と利益の推移、純資産、借入金の返済状況、資金繰り |
| 主に使う制度 | 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金、信用保証付き融資、自治体の制度融資 | 公庫の各種融資、信用保証付き融資、プロパー融資 |
| 主な提出書類 | 創業計画書、見積書、自己資金の裏づけ(通帳)、許認可書類 | 決算書、試算表、資金繰り表、借入金一覧 |
| 留意点 | 準備した自己資金の出どころを説明できること | 赤字や債務超過がある場合は原因と改善策を示すこと |

創業時は過去の実績がないため、事業計画の中身と、経営者本人の経験、自己資金の準備状況が評価の中心になります。売上の根拠、原価や人件費の見積り、資金が底をつかないかという資金繰りの見通しを、数字で説明できるかどうかが問われます。
通常時は決算書が評価の中心です。直近2期から3期の損益と、貸借対照表の純資産、借入金の返済状況、資金繰りの安定性が見られます。赤字や債務超過があっても、原因が一時的なものであることと、改善の道筋を示せれば検討の対象になります。
3. 日本政策金融公庫の融資
3.1 創業期は「新規開業・スタートアップ支援資金」
| 制度 | 利用できる方 | 融資限度額 | 返済期間 | 担保・保証人 |
|---|---|---|---|---|
| 新規開業・スタートアップ支援資金 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 | 7,200万円 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) | 希望を聞いて相談。経営者保証免除特例制度(法人)を併用できる |
| マル経融資(小規模事業者経営改善資金) | 商工会議所・商工会等の経営指導を受けている小規模事業者で、商工会議所等の長の推薦を受けた方 | 2,000万円 | 10年以内(うち据置期間2年以内)※公庫の現在の案内では設備資金・運転資金を区別していません | 無担保・無保証人 |
| そのほかの制度 | セーフティネット貸付、企業活力強化貸付、挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)など目的別の制度がある | 制度により異なる | 制度により異なる | 制度により異なる |
かつて創業融資の代表だった「新創業融資制度」は2024年3月末で取扱いが終了し、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合されています。対象は新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方で、融資限度額は7,200万円です。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、いずれも据置期間を5年以内まで設定できます。
旧制度にあった「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件は、2024年4月からなくなりました。ただし自己資金の額は、事業への準備状況や計画の実現性を判断する材料として引き続き重視されます。
女性の方、35歳未満または55歳以上の方、認定特定創業支援等事業を受けて市区町村の証明書を取得した方などは、基準利率より低い特別利率の対象になります。「中小企業の会計に関する基本要領」などを適用(予定を含む)したうえで、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)の指導と助言を受けて自ら事業計画書を策定した場合も、特別利率の対象です。
3.2 小規模事業者はマル経融資も使える
商工会議所や商工会の経営指導を受けている小規模事業者は、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)を利用できます。融資限度額は2,000万円、無担保・無保証人で、原則として6か月以上の経営指導を受け、商工会議所等の長の推薦を受けることが条件になります。返済期間について、日本政策金融公庫の現在の案内では設備資金と運転資金を区別せず「10年以内(うち据置期間2年以内)」と示されています(かつては運転資金を7年以内とする案内でした)。実際に設定できる期間は資金の使いみちや返済計画によって変わるため、商工会議所や公庫の窓口で確認してください。
3.3 担保と保証人
公庫の融資では、担保や保証人の有無を希望に応じて相談できます。経営者保証を免除できる「経営者保証免除特例制度」(法人が対象)を併用できる制度もあります。公庫の案内では、この特例による利率の上乗せはありません。一方、信用保証協会の保証付き融資で経営者保証を提供しない制度を選ぶと、保証料率が上乗せされることがあります。
4. 信用保証協会の保証付き融資
4.1 仕組み
信用保証付き融資は、金融機関がお金を貸し、信用保証協会が返済を保証する仕組みです。実績の少ない事業者でも金融機関が貸しやすくなる一方、借り手は信用保証料を負担します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 金融機関が融資し、信用保証協会が返済を保証する。保証があることで金融機関が貸しやすくなる |
| 借り手の負担 | 金利のほかに信用保証料がかかる |
| 保証料率 | 経営状況に応じた9つの料率区分から適用。担保の提供がある場合や会計参与設置会社などは割引がある |
| 代位弁済後の扱い | 協会が金融機関へ代位弁済しても借り手の債務は消えない。以後は信用保証協会へ返済する |
| 制度融資との関係 | 自治体の制度融資は、信用保証付き融資に自治体の保証料補助や利子補給を組み合わせたもの |
| 経営者保証 | 創業時などに経営者保証を不要とする保証制度もある。条件や保証料の扱いは協会・制度により異なる |
信用保証料の料率は、経営状況に応じた9つの料率区分から適用されます。担保を提供した場合や会計参与を設置している場合などには割引があります。実際の料率や制度は各信用保証協会によって異なるため、地元の協会の案内で確認してください。
4.2 誤解しやすい点
もっとも誤解が多いのは、返済できなくなったときの扱いです。信用保証協会が金融機関に代位弁済をしても、借り手の返済義務がなくなるわけではありません。代位弁済の後は、信用保証協会に対して返済していくことになります。保証は金融機関のリスクを減らす仕組みであって、借り手の債務を免除する仕組みではありません。
4.3 制度融資
都道府県や市区町村が、金融機関と信用保証協会と連携して提供するのが制度融資です。自治体が信用保証料や利子の一部を補助するため、負担が軽くなることがあります。手続きに自治体の窓口が加わるぶん時間がかかるため、資金が必要な時期から逆算して動きます。
5. 審査で見られるポイント
| 見られる点 | 確認される内容 | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 返済原資 | 利益とキャッシュフローで返済できるか | 資金繰り表、返済計画(年間返済額と税引後利益+減価償却費の比較) |
| 資金の使いみち | 設備か運転か、金額の根拠があるか | 見積書、発注予定表、運転資金の内訳 |
| 事業の実現性 | 売上の根拠、競合と強み、販売先の見込み | 創業計画書、取引先の内示や契約書 |
| 経営者の経験と信用情報 | 同業種の経験年数、個人の借入や延滞の履歴 | 職務経歴、個人の借入状況の整理 |
| 自己資金 | 準備の過程(コツコツ貯めたか、直前の入金か) | 通帳の記録。直前に他人から入金された資金は説明が必要 |
| 税金・社会保険料の納付 | 滞納の有無。制度によっては完納が要件 | 納税証明書。滞納がある場合は分割納付の手続きと実績 |
| 決算内容(通常時) | 直近2〜3期の損益、純資産、借入金の状況 | 決算書、直近の試算表、借入金一覧 |
金融機関が確認するのは、返済の見込みが立つかという1点に尽きます。そのために、事業内容と収益の見通し、資金の使いみち、返済原資、経営者の信用情報、税金や社会保険料の納付状況を確認します。
税金の滞納は特に影響が大きい項目です。マル経融資のように税金の完納が要件になっている制度もあります。滞納がある場合は、分割納付の手続きと実績を整えてから相談するほうが前に進みます。
創業融資では、自己資金をどう準備したかも見られます。毎月コツコツ貯めた通帳の記録は準備の裏づけになりますが、直前に他人から振り込まれた資金は、見せ金と判断されることがあります。
6. 必要書類と申込みの流れ
| 区分 | 創業時 | 通常時 |
|---|---|---|
| 事業の計画 | 創業計画書、資金繰り計画 | 試算表、今期の見通し、資金繰り表 |
| 実績を示す資料 | (前職の実績や資格など) | 決算書2〜3期分、勘定科目内訳明細書、法人税等の申告書 |
| 資金の裏づけ | 自己資金の分かる通帳、見積書 | 見積書、契約書 |
| 本人・会社の確認 | 本人確認書類、履歴事項全部証明書(法人)、許認可証 | 同左 |
| 税金関係 | 納税証明書 | 納税証明書(法人税・消費税・源泉所得税など) |
| 借入状況 | 個人の借入がある場合はその明細 | 借入金一覧(残高、毎月返済額、金利、担保・保証) |
申込みから入金までは、一般的に3週間から1か月半程度かかります。面談では、事業計画の根拠、資金の使いみち、返済の見通しを自分の言葉で説明できることが重要です。
創業融資では創業計画書が中心の資料になります。売上の計算根拠(客単価と客数、単価と受注件数など)、原価と経費の内訳、必要な設備と金額、開業からの資金繰り計画を、具体的な数字で示します。
7. 借りたお金と税金の関係
融資は税務上、収益ではありません。ここを誤解していると、資金繰りと利益の感覚がずれます。
| 項目 | 取扱い | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 借入金の入金 | 収益ではない(負債の増加) | 利益とは無関係。消費税の課税対象外 |
| 元本の返済 | 経費にならない | 返済原資は税引後の利益。年間返済額が「税引後利益+減価償却費」を超えると資金が減る |
| 支払利息 | 損金・必要経費になる | 発生した期間に対応する部分を費用にする |
| 信用保証料 | 保証期間に対応する部分を各期の費用にする | 1年以内のものは継続適用を条件に支払時の損金にできる場合がある(短期前払費用) |
| 繰上返済で保証料が戻った場合 | その事業年度の収益 | 返戻金は雑収入として計上。前払費用として残っている未経過分は同じ期に費用に振り替える |
| 金銭消費貸借契約書 | 印紙税がかかる | 契約金額に応じた印紙を貼付 |
| 利子補給・保証料補助 | 収益(益金・収入)になる | 補助を受けた期の収入に計上 |

借入金を受け取っても収入にはならず、元本を返済しても経費にはなりません。経費になるのは支払利息だけです。つまり、返済原資は税金を払った後の利益から出すことになります。年間の元本返済額が「税引後利益+減価償却費」を上回る状態が続くと、黒字でも資金が減っていきます。
信用保証料は保証期間に対応する部分を各期の費用にします。期間が1年以内のものは、継続適用を条件に支払時の損金にできる場合があります(短期前払費用)。繰上返済をして保証料の返戻を受けたときは、その事業年度の収益として処理します。金銭消費貸借契約書には印紙税がかかります。
8. よくある質問
8.1 赤字でも融資は受けられますか?
受けられる場合があります。赤字の原因が一時的なもの(設備投資、コロナ後の一過性の要因、災害など)で、改善の道筋を数字で説明でき、返済原資を確保できる見通しがあれば検討の対象になります。逆に、慢性的な赤字で資金繰り表も作っていない状態では厳しくなります。
8.2 創業前と創業後、どちらで申し込むのが有利ですか?
創業前または創業直後のほうが、創業期向けの制度を使いやすい傾向にあります。事業開始後に時間が経つと、計画ではなく実績で評価されるため、初年度の業績が振るわない場合はかえって不利になることがあります。開業資金は開業前に相談を始めるのが基本です。法人と個人事業主のどちらで始めるかによって必要な資金や手続きも変わるため、法人化の判断とあわせて検討してください。
8.3 複数の金融機関から借りても大丈夫ですか?
問題ありません。公庫と信用保証付き融資を組み合わせるのは一般的です。ただし、同時期に何件も申し込むと、資金使途の重複や返済能力を超えた借入とみなされることがあります。必要額と返済計画を整理したうえで、順序を決めて進めます。
8.4 返済が苦しくなったらどうすればよいですか?
延滞する前に金融機関へ相談します。返済期間の延長や元本の据置き(リスケジュール)に応じてもらえる場合があります。延滞してからでは選択肢が狭まり、信用情報にも影響します。相談の際は、資金繰り表と改善計画を用意します。なお、小規模企業共済の契約者貸付や、経営セーフティ共済の一時貸付金を当座のつなぎに使えることもあります。
8.5 融資と補助金はどちらを先に考えるべきですか?
補助金は原則として後払いで、対象経費を先に支出する必要があります。採択されても入金は事業終了後のため、つなぎの資金として融資が必要になることがあります。補助金を使う計画があるときこそ、資金繰りの山と谷を先に確認してください。

9. まとめ
この記事では、事業融資の種類、創業時と通常時の審査の違い、日本政策金融公庫と信用保証付き融資の仕組み、必要書類、借入金の税務までを解説しました。
創業期の資金は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合され、自己資金の割合そのものを要件とする規定はなくなりました。ただし審査では、計画の具体性、自己資金の準備過程、経営者の経験が引き続き重視されます。通常時は決算書と資金繰りが評価の中心です。
融資の成否を分けるのは、数字で説明できる計画と、日頃の試算表の精度です。決算書の内容は前もって整えられます。日頃から数字を共有しておくと動きやすくなりますので、税務顧問契約もあわせてご検討ください。借入の必要額と返済可能額の試算、創業計画書や資金繰り表の作成、金融機関への説明資料の準備まで対応していますので、資金が必要になる前にご相談ください。
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