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【2026年版】個人事業主の節税対策|青色申告・経費・小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済の効果と注意点を税理士が解説

個人事業主は、会社員と違って自分で確定申告をする分、節税のために使える制度がたくさんあります。一方で、「経費を増やせば得」「共済に入れば節税」と思って始めたものの、効果が思ったより小さかったり、解約で損をしたりするケースも少なくありません。
節税策には、所得そのものを減らすもの(経費・青色申告特別控除)と、所得から差し引く控除を増やすもの(小規模企業共済・iDeCoなど)があり、所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料のどれが下がるかが違います。
この記事では、2026年(令和8年分)の制度にもとづいて、個人事業主が取り組みやすい節税策を、効果の大きさと注意点をあわせて整理します。令和9年分から変わる青色申告特別控除や、2026年12月に上がるiDeCoの限度額にも触れます。
この記事のポイント
- 節税の基本は「青色申告」と「経費のもれなく計上」。青色申告特別控除は複式簿記とe-Taxで65万円、令和9年分からは優良な電子帳簿などで最大75万円になる
- 小規模企業共済(月7万円まで)とiDeCo(第1号被保険者は国民年金基金などとあわせて月6.8万円まで。2026年12月から7.5万円)は、掛金の全額が所得控除になる
- 経営セーフティ共済の掛金は必要経費になるが、解約手当金を受け取った年に収入になる「課税の繰延べ」。40か月未満の任意解約は元本割れ
- 所得控除(小規模企業共済・iDeCoなど)は国民健康保険料の計算基礎を下げない。経費や青色申告特別控除は所得そのものを減らすので、国保料の所得割の計算基礎も下がる
- 事業所得700万円の例では、青色申告・小規模企業共済・iDeCoの組み合わせで、所得税と住民税が年約68万円軽くなる
1. 個人事業主の節税の考え方
1.1 かかる税金と保険料
個人事業主の利益(事業所得)には、次の税金と保険料がかかります。
- 所得税(5%〜45%の累進税率と、復興特別所得税2.1%)
- 住民税(所得割は原則10%)
- 個人事業税(法定業種の場合。事業主控除290万円を超える部分に3〜5%)
- 国民健康保険料と国民年金保険料
- 消費税(課税事業者の場合)
所得税は所得が増えるほど税率が上がるため、所得が多い人ほど、同じ額を減らしたときの節税効果が大きくなります。たとえば所得税率20%の人なら、所得を10万円減らすと、所得税と住民税をあわせて約3万円軽くなります。
1.2 節税策の種類と、下がる負担
節税策は大きく、所得そのものを減らすもの(経費・青色申告特別控除)と、所得から差し引く控除を増やすもの(小規模企業共済・iDeCoなどの所得控除)に分かれます。どちらも所得税と住民税は下がりますが、国民健康保険料と個人事業税は下がり方が違います。
| 節税策 | 所得税・住民税 | 国民健康保険料 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 必要経費(家事按分、少額減価償却資産、家族への給与、経営セーフティ共済の掛金など) | 下がる | 下がる | 所得そのものが減る。ただし、お金も出ていく |
| 青色申告特別控除(最大65万円) | 下がる | 下がる | 所得そのものが減る。個人事業税には適用されない |
| 所得控除(小規模企業共済、iDeCo、国民年金基金、社会保険料、生命保険料など) | 下がる | 下がらない | 国保料の所得割は、所得から基礎控除43万円だけを引いて計算する |
| ふるさと納税・医療費控除 | 下がる | 下がらない | ふるさと納税は上限内なら実質2,000円の負担 |

国民健康保険料の所得割は、前年の所得から基礎控除(43万円)だけを差し引いた金額で計算します。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除などの所得控除は使われないため、国保料を下げたい場合は、経費と青色申告特別控除が中心になります。ただし、国保料がすでに上限(賦課限度額)に達している場合などは、保険料が変わらないこともあります。家族に給与を払う場合は、家族の所得も増えるため、世帯全体の保険料で比べます。また、個人事業税には青色申告特別控除が適用されません。
2. まず取り組みたい基本の節税
2.1 青色申告で最大65万円の控除を受ける
青色申告をすると、所得から「青色申告特別控除」を差し引けます。2026年分(令和8年分)までは、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告する(または優良な電子帳簿で保存する)と65万円、複式簿記で書面申告なら55万円、簡易簿記なら10万円です。
令和8年度税制改正により、令和9年分(2027年分)からは控除額が次のように変わります。
| 帳簿と申告の方法 | 令和8年分(2026年分)まで | 令和9年分(2027年分)以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿(または一定の要件を満たすデジタルシームレス保存) | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記+e-Taxで申告(または優良な電子帳簿で保存) | 65万円 | 65万円(e-Taxでの申告が必要) |
| 複式簿記+書面で申告 | 55万円 | 10万円 |
| 簡易簿記 | 10万円 | 10万円(前々年の収入が1,000万円を超える人は対象外) |
紙で申告すると控除が10万円に下がるため、今のうちに会計ソフトとe-Taxの準備をしておくことが大切です。青色申告には、ほかにも赤字を翌年以降3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできるなどの特典があります。青色申告を始めるには、適用を受けたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
2.2 経費をもれなく計上する
事業に必要な支出は、必要経費として所得から差し引けます。特に計上もれが多いのは、次のようなものです。
- 自宅を事務所として使っている場合の家賃・電気代・通信費(家事按分)
- 事業で使う車のガソリン代・保険料・自動車税・減価償却費(事業で使った割合分)
- 開業前に使った広告費や打合せの交通費などの「開業費」
- 取引先との打合せの飲食代、業界団体の会費、書籍・セミナー代
家事按分は、使用時間や面積など、事業で使った割合を説明できる根拠で計算します。開業費は繰延資産として扱い、開業した年に全額を経費にしてもよいですし、利益が出た年に好きな額を経費にすることもできます(任意償却)。
一方で、家族旅行や私的な飲食など事業と関係のない支出を経費にすることはできません。税務調査で否認されると、追加の税金に加えて加算税や延滞税もかかります。
2.3 少額の備品はその年に全額を経費にする
青色申告をしている個人事業主は、取得価額30万円未満(令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満)の減価償却資産を、事業に使い始めた年に全額経費にできます(少額減価償却資産の特例。年間の合計300万円まで)。買っただけで年内に使い始めていなければ、その年の経費にはなりません。パソコンや事務機器、ソフトウェアなどを買う時期を、利益が多い年にあわせると効果的です。
なお、10万円未満の資産は青色・白色を問わず全額を事業に使い始めた年の経費にでき、20万円未満の資産は使い始めた年から3年間で均等に経費にする方法(一括償却資産)も選べます。
2.4 家族への給与を経費にする
家族が事業を手伝っている場合、青色申告で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していれば、届け出た範囲内で、仕事の内容に見合う給与を必要経費にできます。家族は15歳以上で、その年に6か月を超える期間、事業に専ら従事していることが条件です。
家族の所得に分散することで、世帯全体の税率を下げられる場合があります。ただし、専従者として給与を受け取った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象になりません。白色申告の場合は、給与ではなく「事業専従者控除」(配偶者86万円、その他の親族50万円が上限)になります。
3. 掛金が控除・経費になる制度を使う
3.1 小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主が自分の退職金を積み立てる制度です。掛金は月1,000円から7万円まで500円単位で選べ、全額を「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。月7万円(年84万円)の掛金なら、課税所得400万円の人で所得税と住民税をあわせて年およそ24万円軽くなります。
1年以内の前納もでき、前納した掛金もその年の控除になるため、年末に利益が多いとわかったときに増額・前納して調整できます。ただし、掛金納付月数が240か月(20年)未満で任意解約すると、受け取れる額が掛金の合計を下回ります。共済金を一括で受け取ると原則として退職所得ですが、65歳未満で任意解約したときの解約手当金は一時所得になります。
3.2 iDeCo・国民年金基金・付加年金
自営業者などの国民年金第1号被保険者は、iDeCo(個人型確定拠出年金)と国民年金基金の掛金を、付加保険料とあわせて月6万8,000円まで払えます(2026年12月1日から月7万5,000円)。iDeCoは前納できず、経過した月の分を払う仕組みです。掛金は全額が所得控除になり、運用益も非課税です。受け取るときは、一時金なら退職所得、年金なら雑所得として課税されますが、それぞれ退職所得控除や公的年金等控除があります。
国民年金に上乗せする「付加保険料」(月400円)も、社会保険料控除の対象です。納めた月数×200円が毎年の年金に上乗せされるため、2年受け取れば元が取れます(国民年金基金に加入している人は付加保険料を納められません)。
iDeCoの資産は原則60歳まで引き出せないため、事業の運転資金とは分けて考える必要があります。
3.3 経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先が倒産したときに無担保・無保証人・無利子で借入れができる制度です。掛金は月5,000円から20万円まで(総額800万円まで)で、個人事業主は支払った掛金を事業所得の必要経費にできます。
| 制度 | 掛金の上限 | 税の扱い | 受け取るとき | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 月7万円(年84万円) | 全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除) | 一括は原則として退職所得、分割は公的年金等の雑所得(65歳未満の任意解約手当金は一時所得) | 240か月未満の任意解約は元本割れ |
| iDeCo(個人型確定拠出年金) | 第1号被保険者は国民年金基金・付加保険料とあわせて月6万8,000円(2026年12月から7万5,000円) | 全額が所得控除。運用益も非課税 | 一時金は退職所得、年金は雑所得 | 原則60歳まで引き出せない。前納はできない |
| 国民年金基金・付加保険料 | 国民年金基金はiDeCoと共通の上限。付加保険料は月400円 | 全額が社会保険料控除 | 終身年金など(公的年金等の雑所得) | 国民年金基金に入ると付加保険料は納められない |
| 経営セーフティ共済 | 月20万円(総額800万円) | 全額が必要経費(解約後2年以内の再加入の掛金などを除く) | 解約手当金はその年の事業所得の収入 | 40か月未満の任意解約は元本割れ。課税の繰延べ |

注意したいのは、経営セーフティ共済の節税は「課税の繰延べ」である点です。解約したときに受け取る解約手当金は、その年の事業所得の収入になります。解約手当金は受け取った年に課税されるため、掛金を払った年と受け取る年の所得・税率を比べて、引退する年や赤字の年など所得が少ない年に解約するのが基本です。また、納付月数が40か月未満で任意解約すると掛金の総額を下回り、令和6年10月1日以後に解約して再加入した場合は、解約から2年間に払う掛金は必要経費にできません。
4. そのほかの控除・制度
4.1 ふるさと納税・医療費控除
ふるさと納税は、所得などに応じた上限の範囲内であれば、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から差し引かれます。確定申告をする場合はワンストップ特例が使えないため、申請済みの寄附も含めて確定申告で寄附金控除を受けます。所得が大きく変わる年は上限も変わるため、年末に利益の見込みを確認してから寄附すると安心です。
自分が、自分または生計を一にする家族のために、その年に支払った医療費から保険金などで補填される金額を引いた額が、10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超える場合は、医療費控除も受けられます。
4.2 消費税の計算方法を選ぶ
課税事業者の場合は、消費税の計算方法も負担に影響します。基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら、売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算し、売上税額から差し引く「簡易課税」を選べます(届出は原則として適用したい課税期間の初日の前日まで。開業時やインボイス登録時、2割・3割特例を適用した翌期などは特例があります)。
インボイス登録をきっかけに課税事業者になった人が使える「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間で終わり、令和9年分・令和10年分は、基準期間の課税売上高1,000万円以下などの要件を満たす個人事業者が、売上税額の3割を納める「3割特例」を選べます(固定資産の取得などにより対象外になる場合があります)。どの方法が有利かは経費の割合によって変わるため、売上と経費の見込みで比べてから選びます。
5. 節税効果の試算例
事業所得700万円(青色申告特別控除の前)、社会保険料100万円の個人事業主が、青色申告(65万円)・小規模企業共済(月7万円)・iDeCo(月6万8,000円)を使った場合の、2026年分の所得税と住民税の目安です。
| 項目 | A:対策なし | B:青色申告+小規模企業共済+iDeCo |
|---|---|---|
| 事業所得(青色申告特別控除の前) | 700万円 | 700万円 |
| 青色申告特別控除 | ― | 65万円 |
| 社会保険料控除 | 100万円 | 100万円 |
| 小規模企業共済(月7万円) | ― | 84万円 |
| iDeCo(月6万8,000円) | ― | 81.6万円 |
| 基礎控除(所得税) | 62万円 | 67万円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 662,100円 | 209,200円 |
| 住民税(所得割) | 557,000円 | 326,400円 |
| 合計 | 1,219,100円 | 535,600円(年683,500円軽くなる) |

3つを組み合わせると、所得税と住民税をあわせて年約68万円軽くなります。このうち青色申告特別控除は所得そのものを減らすため、国民健康保険料の所得割の計算基礎も下がります。住民税は、2026年の所得に対する2027年度分の概算です。小規模企業共済とiDeCoの掛金は、将来の退職金・年金として手元に残るお金です。
6. 節税の注意点
6.1 手元のお金が減る節税に注意
経費を増やす節税は、税金が減る以上にお金が出ていきます。税率30%の人が10万円の不要な支出をすると、税金は3万円減っても、手元のお金は7万円減ります。必要な支出のタイミングを調整するのはよいですが、節税のためだけの支出は避けましょう。
6.2 届出の期限を守る
青色申告や青色事業専従者給与、簡易課税などは、事前の届出が必要です。原則として、期限を過ぎるとその年は使えません。
| 届出・手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 青色申告承認申請書 | 税務署 | 適用を受けたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 税務署 | 給与を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や新たに専従者ができた場合は2か月以内) |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 税務署 | 原則、適用を受けたい課税期間の初日の前日まで(開業時、インボイス登録時、2割・3割特例を適用した翌期などは特例あり) |
| 小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済の加入(共済は前納も可能) | 各窓口 | 控除・経費になるのは、その年に払った掛金。iDeCoは前納不可。共済の前納は前納期間1年以内の掛金が支払った年の控除・経費の対象。年内に控除したい場合は、手続きの締切に余裕を持って申し込む |
6.3 所得が増えたら法人化も検討する
所得が大きくなると、所得税の税率が上がるため、法人化(マイクロ法人を含む)したほうが税金と社会保険料の合計が少なくなる場合があります。ただし、法人には設立費用や赤字でもかかる住民税の均等割、社会保険の加入義務などがあります。所得の見込みと家族構成をもとに、個人のままの場合と比べてから判断してください。
7. まとめ
個人事業主の節税は、まず青色申告(複式簿記とe-Taxで65万円控除)と経費のもれのない計上から始め、次に小規模企業共済やiDeCoなど掛金が全額控除になる制度を、手元資金と相談しながら使うのが基本です。
経営セーフティ共済は課税の繰延べであること、所得控除は国民健康保険料を下げないこと、届出に期限があることを押さえておくと、思わぬ損を防げます。令和9年分からは青色申告特別控除が変わり、2026年12月にはiDeCoの限度額も上がるため、制度の変更にあわせて見直していきましょう。
個人事業主の方の節税策の選び方や、法人化の判断については、LivRoot税理士法人にご相談ください。

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