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【2026年版】小規模企業共済をわかりやすく解説|加入資格・掛金・節税効果・受け取り方と元本割れの注意点

小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社の役員が自分自身の退職金を積み立てる制度です。国の機関である中小機構が運営し、掛金の全額を所得控除できるため、節税しながら老後資金を準備できます。一方で、加入期間が短いうちに任意解約すると元本割れするなど、知らずに始めると損をする点もあります。この記事では、加入できる人の条件、掛金の決め方、節税効果、受け取り方と税金、注意点までを、2026年時点の制度にもとづいて解説します。
この記事のポイントは次の3点です。
- 掛金は月1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、加入後もいつでも増額・減額できる。全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になる
- 受け取り方で税金の扱いが変わる。一括受取りは退職所得、分割受取りは公的年金等の雑所得となり、どちらも税負担が軽い
- 掛金納付月数が240か月(20年)未満で任意解約すると、受け取れる解約手当金が掛金の合計額を下回る
1. 小規模企業共済とは
小規模企業共済は、小規模企業共済法にもとづき独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、経営者のための積立型の退職金制度です。加入者は全国で約162万人にのぼります。
会社員には退職金や厚生年金がありますが、個人事業主は事業をやめても退職金がありません。小規模企業共済は、その不足を自分で埋めるための制度です。毎月の掛金を積み立て、廃業や退職、65歳以降の老齢給付のタイミングで共済金を受け取ります。掛金は全額が所得控除になり、受け取るときも退職所得や公的年金等の雑所得として扱われるため、入口と出口の両方で税制上の優遇があります。
2. 加入できる人
2.1 業種ごとの従業員数の条件
加入できるのは、個人事業主、その共同経営者、小規模な会社等の役員です。条件となる従業員数は、法人か個人かではなく業種によって分かれます。
| 営む事業の種別 | 常時使用する従業員数の条件 | 加入できる立場 |
|---|---|---|
| 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る) | 20人以下 | 個人事業主、その共同経営者(2人まで)、会社等の役員 |
| 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 | 同上 |
| 企業組合の役員 | 事業に従事する組合員が20人以下 | 理事・監事 |
| 協業組合の役員 | 20人以下 | 理事・監事 |
| 農業の経営を主として行う農事組合法人の役員 | 20人以下 | 理事・監事 |
| 弁護士法人、税理士法人等の士業法人 | 5人以下 | 業務執行社員 |
建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、宿泊業・娯楽業のサービス業は常時使用する従業員が20人以下、商業(卸売業・小売業)と宿泊業・娯楽業以外のサービス業は5人以下です。2つ以上の事業を営んでいる場合は、主たる事業の業種で判定します。
中小機構は「常時使用する従業員」を、正社員として雇用されている方のうち、事業主本人、共同経営者の要件を満たす方(2人まで)、家族従業員、パート従業員、アルバイトなど臨時に期間を定めて雇い入れている方を除いた人数と説明しています。ただし、名称がパートやアルバイトであっても、雇用期間の定めがなく常時勤務しているなど実態によって判断が分かれることがあります。人数が条件の境目にある場合は、加入窓口や中小機構に確認してください。なお、この人数は加入時点の要件であり、加入後に従業員が増えて条件から外れても契約は続けられます。
2.2 加入できない人
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 給与所得者 | 法人または個人事業主と常時雇用関係にある方(例:アパート経営をしている会社員) |
| 役員登記のない実質的経営者 | 相談役、顧問などで履歴事項全部証明書に役員登記されていない方 |
| 中退共等の被共済者 | 中小企業退職金共済、建設業退職金共済、清酒製造業退職金共済、林業退職金共済の被共済者 |
| 生命保険外務員 | ― |
| 配偶者等の専業従事者・従業員 | 共同経営者の要件をすべて満たす場合は「個人事業主の共同経営者」として加入可 |
| 直接営利を目的としない法人の役員 | 協同組合、医療法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、社団法人、財団法人、NPO法人など |
| 業務執行権のない役員・使用人兼務役員 | 合同会社・合資会社・合名会社で業務執行権のない社員、常勤役職員(使用人兼務役員) |
| その他 | 外国法人の役員、学業を本業とする全日制高校生等 |
会社員が副業でアパート経営をしている場合のように、常時雇用関係にある給与所得者は加入できません。役員登記されていない相談役や顧問、生命保険外務員、直接営利を目的としない法人(医療法人、社団法人、NPO法人など)の役員も対象外です。中小企業退職金共済(中退共)や建設業退職金共済の被共済者になっている方も加入できません。
加入後に資格がなかったと判明した場合は、契約時にさかのぼって契約が取り消され、掛金が返還されます。すでに所得控除を受けている場合は修正申告が必要になります。
2.3 共同経営者も加入できる
個人事業主と一体となって経営に携わっている共同経営者は、事業主1人につき2人まで加入できます。事業の重要な意思決定に関与しているか資金を提供していること、業務執行に対する報酬を受けていることなどが条件で、共同経営契約書の締結が必要です。血縁関係の有無は問われないため、配偶者や後継者である子が共同経営者として加入する例もあります。
3. 掛金の決め方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金月額 | 1,000円〜70,000円(500円単位) |
| 増額・減額 | 加入後いつでも可能。回数の制限なし(同じ月のうちの再変更はできません) |
| 納付方法 | 共済契約者本人名義の預金口座からの振替。月払い、半年払い(年2回)、年払い(年1回)から選択 |
| 口座振替日 | 毎月18日(土日祝の場合は翌営業日) |
| 前納 | 1年以内の前納が可能。前納した掛金もその年の所得控除の対象 |
| 税法上の取扱い | 全額が小規模企業共済等掛金控除。事業上の必要経費・法人の損金にはできない |
| 引落しができなかった場合 | 未納となった月の翌々月以降の最初の偶数月に、請求月分と合算して振替 |
掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲で、500円単位で自由に設定できます。加入後の増額・減額はいつでもでき、回数の制限もありません(同じ月のうちに再変更することはできません)。納付は共済契約者本人名義の口座からの振替で、毎月払いのほか、半年払い、年払いも選べます。振替日は毎月18日です。
1年以内の前納もでき、前納した掛金もその年の所得控除の対象になります。年末に所得が想定より多いことがわかった場合、12月に翌年分を前納して控除額を増やすといった使い方ができます。
4. 節税効果
4.1 掛金は全額が所得控除
掛金は、その全額を「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金と同じ区分の控除ですが、それぞれ別に計算して両方とも控除できます。
| 課税所得(掛金控除前) | 所得税率 | 掛金 月1万円(年12万円) | 掛金 月3万円(年36万円) | 掛金 月7万円(年84万円) |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 10% | 約2万4,000円 | 約7万2,000円 | 約16万8,000円 |
| 400万円 | 20% | 約3万6,000円 | 約10万8,000円 | 約25万2,000円 |
| 700万円 | 23% | 約3万9,600円 | 約11万8,800円 | 約27万7,200円 |
| 1,000万円 | 33% | 約5万1,600円 | 約15万4,800円 | 約36万1,200円 |

月額7万円(年84万円)を払う場合、課税所得400万円の方なら所得税と住民税を合わせて年間およそ25万円の負担が軽くなります。掛金の上限まで払えば、10年で約250万円、20年で約500万円の節税になる計算です。
4.2 事業の経費にはならない
掛金は事業の必要経費や法人の損金にはできません。あくまで契約者本人の所得から控除する仕組みで、本人の収入の中から納付します。法人の役員が加入する場合も、掛金は会社が払うのではなく役員個人が払います。確定申告では、中小機構から送られてくる「小規模企業共済掛金払込証明書」を使って控除を受けます。
5. 共済金の受け取り
5.1 受け取れるお金は4種類
| 種類 | 個人事業主の場合 | 会社等役員の場合 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 共済金A | 個人事業を廃業した場合/共済契約者が亡くなった場合 | 会社等が解散した場合 | もっとも多い |
| 共済金B | 老齢給付(65歳以上で180か月以上払い込んだ方。仕事を続けたまま請求可) | 疾病・負傷による退任/65歳以上での退任/死亡/老齢給付 | 共済金Aに次ぐ |
| 準共済金 | 法人成りして加入資格がなくなった場合 | 解散・疾病・負傷によらず65歳未満で役員を退任した場合 | 掛金合計額と同程度 |
| 解約手当金 | 任意解約/機構解約(12か月以上の滞納)/法人成り後も資格はあるが解約した場合 | 任意解約/機構解約 | 掛金合計額の80%〜120% |
受け取れるお金は、共済金A、共済金B、準共済金、解約手当金の4種類で、どれに当たるかは事業上の立場と請求の理由で決まります。個人事業主が廃業した場合や死亡した場合は共済金A、65歳以上で180か月以上払い込んだ方の老齢給付は共済金Bです。個人事業を法人成りして加入資格がなくなった場合は準共済金、自分の意思で解約する場合は解約手当金になります。金額は共済金Aがもっとも多く、共済金B、準共済金、解約手当金の順に少なくなります。
5.2 受け取れる金額の目安
| 掛金納付年数 | 掛金の合計額 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 | 解約手当金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5年 | 60万円 | 62万1,400円 | 61万4,600円 | 60万円 | 48万円 |
| 10年 | 120万円 | 129万600円 | 126万800円 | 120万円 | 102万円 |
| 15年 | 180万円 | 201万1,000円 | 194万400円 | 180万円 | 166万5,000円 |
| 20年 | 240万円 | 278万6,400円 | 265万8,800円 | 241万9,500円 | 240万円 |

掛金月額1万円で20年間払い込んだ場合、掛金の合計240万円に対して共済金Aは約278万円、共済金Bは約265万円です。共済金には、毎年度の運用収入に応じて経済産業大臣が定める付加共済金が加算されることがあります。
5.3 受け取り方と税金
| 受け取り方 | 税法上の取扱い |
|---|---|
| 共済金(死亡を除く)または準共済金を一括で受け取る | 退職所得 |
| 共済金を分割で受け取る | 公的年金等の雑所得 |
| 共済金を一括と分割の併用で受け取る | 一括分は退職所得、分割分は公的年金等の雑所得 |
| 遺族が共済金を受け取る(死亡退職金) | 相続税法上のみなし相続財産 |
| 65歳以上で任意解約する | 退職所得 |
| 65歳未満で任意解約する | 一時所得 |
| 12か月以上の滞納による機構解約 | 一時所得 |
| 分割受取りの要件 | 共済金AまたはBであること、請求事由が死亡でないこと、請求事由の発生日に60歳以上であること、分割受取りは共済金300万円以上(併用は330万円以上で一括分30万円以上) |
受け取り方は一括、分割、一括と分割の併用から選べます。一括で受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得として扱われます。退職所得は勤続年数に応じた退職所得控除があり、控除後の金額を2分の1にしてから課税されるため、税負担が大きく軽くなります。
ただし分割受取りを選ぶには、共済金AまたはBであること、請求事由が死亡でないこと、請求事由が発生した日に60歳以上であること、分割受取りの場合は共済金が300万円以上(併用の場合は330万円以上)であることなど、すべての要件を満たす必要があります。
6. 注意すべき点
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 240か月未満の任意解約は元本割れ | 解約手当金は掛金合計額の80%〜120%で、100%以上になるのは掛金納付月数240か月(20年)以上から | 無理のない掛金で始め、余裕が出てから増額する |
| 増減額すると区分ごとに月数を数える | 加入期間が20年を超えていても、掛金区分ごとの納付月数が240か月未満だと元本割れすることがある | 減額は慎重に検討する |
| 短期間の掛け捨て | 共済金A・Bは6か月未満、準共済金・解約手当金は12か月未満だと受け取れない | 最低でも1年は続けられる金額にする |
| 掛金は事業の経費にならない | 必要経費・損金ではなく、本人の所得控除 | 法人の役員が加入する場合も役員個人が払う |
| 資金繰りが厳しいときの解約 | 解約すると元本割れの可能性がある | 掛金の減額や掛止め、貸付制度の利用を先に検討する |
| 65歳未満の任意解約は一時所得 | 退職所得に比べて税負担が重くなる | 廃業・退任のタイミングまで続ける |

もっとも重要なのは、掛金納付月数が240か月(20年)未満で任意解約すると、受け取れる解約手当金が掛金の合計額を下回ることです。解約手当金は納付月数に応じて掛金合計額の80%から120%で、100%を超えるのは240か月以上からです。途中で掛金を増額・減額した場合は掛金の区分ごとに月数を数えるため、加入期間が20年を超えていても元本割れすることがあります。
また、共済金A・Bは掛金納付月数が6か月未満、準共済金と解約手当金は12か月未満だと受け取れず、掛金が掛け捨てになります。無理のない金額で始めて、余裕が出たら増額するのが安全です。
65歳未満で任意解約した場合の解約手当金は一時所得となり、退職所得に比べて税負担が重くなる点にも注意してください。
7. 貸付制度
契約者は、掛金の範囲内で事業資金の貸付けを受けられます。一般貸付け、緊急経営安定貸付け、傷病災害時貸付け、福祉対応貸付け、創業転業時・新規事業展開等貸付け、事業承継貸付け、廃業準備貸付けの7種類があり、低金利で即日貸付けにも対応しています。担保や保証人は不要です。
資金繰りが厳しくなったときに解約してしまうと元本割れの可能性がありますが、貸付制度を使えば契約を続けたまま資金を調達できます。解約を検討する前に、この制度を確認してください。
8. ほかの制度との違い
| 項目 | 小規模企業共済 | iDeCo(個人型確定拠出年金) | 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済) |
|---|---|---|---|
| 目的 | 経営者自身の退職金の準備 | 老後資金の準備 | 取引先の倒産による連鎖倒産の防止 |
| 運営 | 中小機構 | 国民年金基金連合会(運用は本人が選択) | 中小機構 |
| 掛金 | 月1,000円〜70,000円(500円単位) | 職業・加入状況による上限(自営業者は月68,000円) | 月5,000円〜200,000円(総額800万円まで) |
| 税法上の取扱い | 全額が小規模企業共済等掛金控除(本人の所得控除) | 全額が小規模企業共済等掛金控除(本人の所得控除) | 必要経費または損金に算入 |
| 受け取れる時期 | 廃業・退任・65歳以上の老齢給付 | 原則60歳以降 | 取引先の倒産時の共済金貸付け、解約時の解約手当金 |
| 元本割れ | 240か月未満の任意解約で元本割れ | 運用成績によって変動 | 40か月未満の解約で元本割れ |
| 併用 | 可能 | 可能 | 可能 |
よく比較されるのがiDeCoと経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。小規模企業共済とiDeCoはどちらも本人の所得控除ですが、iDeCoは自分で運用商品を選び、原則60歳まで引き出せません。小規模企業共済は運用を中小機構に任せる代わりに、廃業や退職の時点で受け取れます。両方に加入して、それぞれの掛金を控除することも可能です。
経営セーフティ共済は取引先の倒産に備える制度で、掛金は事業の必要経費や法人の損金になります。目的も控除の種類も違うため、併用が有効なケースが多くあります。
なお、小規模企業共済からiDeCoや企業型確定拠出年金へ資産を移す制度はありません。それぞれ独立した制度として加入・脱退を判断します。
9. よくある質問
9.1 掛金を払えなくなったらどうなりますか?
減額して続けることも、一時的に納付を止めること(掛止め)もできます。12か月以上滞納すると中小機構によって解約されるため、払えない状態が続く場合は早めに減額を申し出てください。減額した場合、減額前の掛金のうち差額部分はその後運用されず、納付月数も増えません。
9.2 法人成りした場合はどうなりますか?
法人成りして加入資格がなくなった場合は準共済金を請求できます。新たに設立した会社が小規模企業者に当たり、役員として加入資格を満たす場合は、契約を続けることもできます。続けるか受け取るかは、掛金納付月数や役員報酬の水準によって有利不利が変わります。
9.3 確定申告ではどう書きますか?
確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、その年に払い込んだ金額を記入します。中小機構から毎年11月頃に届く掛金払込証明書の金額を使います。年の途中で加入した場合や前納した場合は、証明書に記載された金額が控除額です。
9.4 加入と同時に節税効果はありますか?
その年に払い込んだ掛金が控除の対象になるため、12月に加入して年払いや前納をすれば、その年から効果があります。ただし手続きには締切があるため、年内の適用を狙う場合は11月頃までに窓口へ相談してください。
9.5 どこで加入手続きをしますか?
中小機構が業務を委託している金融機関の本支店、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、青色申告会、損保ジャパンなどの窓口で申し込みます。個人事業主は確定申告書の控え、開業したばかりの場合は開業届の控えが必要です。会社役員は履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)を用意します。
10. まとめ

この記事では、小規模企業共済の加入資格、掛金のルール、節税効果、共済金の受け取り方と税金、注意点までを解説しました。
掛金の全額が所得控除になり、受け取るときも退職所得や公的年金等の雑所得として扱われるため、税制面の効果は大きい制度です。一方で、240か月未満の任意解約では元本割れし、掛金は事業の経費にはならないという制約もあります。事業が安定しているうちに無理のない金額で始め、利益が出た年に増額したり前納したりするのが基本的な使い方です。
いくらの掛金が適切か、iDeCoや経営セーフティ共済とどう組み合わせるかは、所得の水準と将来の資金計画によって変わります。試算をご希望の方はご相談ください。
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