LivRoot税理士法人 > 税務・会計・財務の学習記事 > 個人事業主 > 経営セーフティ共済とは?仕組み・節税効果・デメリット・加入方法を税理士がわかりやすく解説
経営セーフティ共済とは?仕組み・節税効果・デメリット・加入方法を税理士がわかりやすく解説

「経営セーフティ共済って聞いたことはあるけど、どんな制度かわからない…」そんな風に思っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、経営セーフティ共済の仕組みやメリット・デメリット、加入方法から共済金の借入れ方まで、分かりやすく徹底解説します。掛金を経費にできる節税効果や、取引先の倒産時に迅速に資金を借り入れられる点といったメリットだけでなく、借入時に掛金の一部が消滅することや解約時の制限といった注意点も明確にお伝えします。中小企業経営者にとって、事業継続の強い味方となる経営セーフティ共済。その詳細を理解し、事業の安定化に役立てていただければと思います。
1. 経営セーフティ共済の基本情報と仕組み
経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者の倒産の影響を受けて中小企業が連鎖倒産することを防止するため、共済契約者が拠出する掛金を原資として共済金の貸付けを受けられる制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。取引先の倒産は中小企業の経営に大きな打撃を与える可能性があり、経営セーフティ共済はこのようなリスクに備えるための重要なセーフティネットです。正しく理解し、有効に活用しましょう。
1.1 経営セーフティ共済の概要
経営セーフティ共済は、毎月一定の掛金を積み立て、取引先が倒産したときに無担保・無保証人・無利子で共済金を借り入れることができる制度です。共済金は、取引先の倒産によって回収が困難になった売掛金債権等の額に応じて貸し付けられます。掛金は税法上、法人は損金、個人事業主は必要経費に算入でき、節税効果も期待できます。また、共済契約を解約した場合には、掛金の納付月数に応じた解約手当金を受け取ることができます。
1.2 加入できる事業者の条件
経営セーフティ共済に加入できるのは、1年以上継続して事業を行っている中小企業者または個人事業主です。中小企業者に該当するかどうかは、業種ごとに定められた基準で判定します(会社は資本金の額または従業員数のいずれか、個人事業主は従業員数で判定)。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤおよびチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
「常時使用する従業員」とは、原則として2か月を超えて雇用される者で、かつ週当たりの所定労働時間がその企業の通常の従業員とおおむね同等である方をいいます。個人事業主の場合は事業主と家族従業員、会社の場合は法人の役員、また雇用期間が2か月以下のアルバイト等は含まれません。なお、上記の要件を満たしていても、事業に係る経理内容が不明な場合や、税金を滞納している場合などは加入が認められないことがあります。
1.3 掛金
掛金は月額5,000円から20万円までの範囲で、5,000円単位で自由に設定できます。加入後の増額はいつでも可能ですが、減額は「事業規模の縮小」「事業経営の著しい悪化、病気やけが、急な費用の支出などで納付の継続が著しく困難」「共済金の借入残高と掛金総額の10倍との合計が8,000万円に達した」のいずれかの理由が必要です(減額の申込時に理由の記載が求められます)。掛金は総額800万円になるまで積み立てることができ、総額が掛金月額の40倍に達した後は掛止め(納付の停止)も可能です。納付は原則として毎月の預金口座振替ですが、希望する月数分の掛金をまとめて払い込む「前納」も利用できます。
1.4 取引先が倒産した場合の共済金の貸付け

取引先が倒産した場合には、無利子・無担保・無保証人で共済金を借り入れることができます。共済金の借入れには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 加入後6か月以上が経過し、6か月分以上の掛金を納付していること
- 共済契約者の直接の取引先事業者が倒産したこと
- 取引先の倒産により売掛金債権等の回収が困難となったこと
- 倒産日から6か月以内に共済金の借入れを請求すること
借入限度額は「回収が困難となった売掛金債権等の額」と「納付した掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない額です。返済は下表のとおり借入額に応じて5年から7年で、いずれも6か月の据置期間を含み、据置期間終了後に毎月均等に分割して返済します。
| 借入額 | 返済期間(6か月の据置期間を含む) | 返済方法 |
|---|---|---|
| 5,000万円未満 | 5年 | 据置期間終了後、毎月均等に分割返済(54回) |
| 5,000万円以上6,500万円未満 | 6年 | 据置期間終了後、毎月均等に分割返済(66回) |
| 6,500万円以上8,000万円以下 | 7年 | 据置期間終了後、毎月均等に分割返済(78回) |
ここで必ず押さえておきたいのが、共済金の借入れを受けると、借入額の10分の1に相当する額が積み立てた掛金から控除される(掛金の権利が消滅する)という点です。たとえば1,000万円を借り入れると、掛金100万円分が消滅します。無利子ではありますが、実質的にはこの控除分がコストになると理解しておきましょう。
1.5 一時貸付金制度
経営セーフティ共済には、取引先が倒産していなくても、臨時に事業資金が必要になった場合に借入れができる「一時貸付金制度」があります。借入額は30万円以上5万円単位で、限度額は掛金の納付月数に応じて下表のとおり定められています。
| 掛金の納付月数 | 借入限度額 |
|---|---|
| 1か月~11か月 | 0円(利用できません) |
| 12か月~23か月 | 掛金総額 × 75% × 95% |
| 24か月~29か月 | 掛金総額 × 80% × 95% |
| 30か月~35か月 | 掛金総額 × 85% × 95% |
| 36か月~39か月 | 掛金総額 × 90% × 95% |
| 40か月以上 | 掛金総額 × 95% × 95% |
| 掛金総額が800万円の場合 | 掛金総額 × 100% × 95%(最高760万円) |
借入期間は1年で、期限一括返済です。利率は年0.9%(令和6年4月1日時点。金融情勢等により変動します)で、利息は借入時に一括前払いです。
2. 経営セーフティ共済のメリット
経営セーフティ共済には、取引先の倒産時に無担保・無利子で共済金の貸付けを受けられること以外にも、さまざまなメリットがあります。
2.1 掛金は税法上の損金または必要経費に算入できる

支払った掛金は、法人であれば損金、個人事業主であれば事業所得の必要経費に算入できます。これにより、法人税・所得税の節税効果が期待できます。また、1年以内の前納掛金は支払った事業年度(年分)の損金・必要経費にできるため、決算間際の利益調整にも使われています。
ただし、この取扱いは自動的に適用されるものではありません。法人は法人税の確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書(別表十(八)Ⅲ)」と適用額明細書を、個人事業主は所得税の確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付する必要があります。添付を忘れると損金・必要経費として認められないおそれがあるため注意しましょう。
なお、掛金の損金算入は「課税の繰り延べ」である点も理解しておく必要があります。後述する解約手当金を受け取ったときは、その全額が法人の益金(個人事業主は事業所得の収入金額)として課税されます。赤字の事業年度や役員退職金の支払いなど、大きな損金が出るタイミングに合わせて解約すると効果的です。
2.2 解約手当金を受け取ることができる

掛金を12か月以上納めていれば、共済契約を解約したときに解約手当金を受け取ることができます。解約手当金の額は、掛金の納付月数と解約の種類に応じて、掛金総額に下表の支給率を乗じた額です。40か月以上納付していれば、任意解約でも掛金総額の100%が戻ってきます。
| 掛金の納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
|---|---|---|---|
| 1か月~11か月 | 0% | 0% | 0% |
| 12か月~23か月 | 80% | 85% | 75% |
| 24か月~29か月 | 85% | 90% | 80% |
| 30か月~35か月 | 90% | 95% | 85% |
| 36か月~39か月 | 95% | 100% | 90% |
| 40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
- 任意解約:共済契約者の都合による解約
- みなし解約:個人事業主の死亡、法人の解散・分割などにより解約したものとみなされる場合
- 機構解約:掛金を12か月以上滞納した場合などに中小機構が行う解約
3. 経営セーフティ共済の注意点とデメリット
経営セーフティ共済は取引先の倒産リスクを軽減するうえで有効な制度ですが、加入前に注意点やデメリットを理解しておくことが重要です。メリットばかりに目を奪われず、自身の事業状況に適しているかを慎重に検討しましょう。
3.1 共済金は借入金であり、掛金の一部が消滅する
経営セーフティ共済は「給付型」ではなく「貸付型」の制度です。共済金は無利子ですが、6か月の据置期間の後、5年から7年で毎月分割して返済する義務があります。加えて、前述のとおり借入額の10分の1に相当する掛金が消滅します。返済計画を立て、無理のない範囲で利用することが大切です。
3.2 解約時の制限事項
任意解約は自由にできますが、掛金の全額が戻ってくるとは限りません。納付月数が40か月未満で任意解約した場合、解約手当金は掛金総額を下回ります。また、納付月数が12か月未満の場合、解約手当金は支給されず、納付した掛金は全額掛け捨てになります。
3.3 解約後2年間は再加入しても掛金を損金にできない
令和6年度税制改正により、令和6年10月1日以後に共済契約を解約し、再び加入した場合、解約日から2年を経過する日までの間に支払う掛金は、損金・必要経費に算入できなくなりました。以前は「解約して益金を計上し、すぐ再加入して掛金を損金にする」という使い方ができましたが、現在はこの方法は使えません。解約のタイミングは慎重に検討しましょう。
4. 経営セーフティ共済の加入方法と手続き
経営セーフティ共済への加入は、事業の安定化を図るうえで重要な一歩です。スムーズに手続きを進めるために、窓口・必要書類・流れを確認しておきましょう。
4.1 加入窓口と申込みの流れ
加入の申込みは、中小機構と業務委託契約を結んでいる「委託団体」(商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、中小企業の組合など)または「代理店」(都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫などの本支店)で行います。中小機構に直接申し込むことはできません。なお、GビズIDプライムを持っている場合は、中小機構の「経営セーフティ共済オンライン手続きポータル」で申込書を作成できます(作成した申込書は窓口へ提出します)。
- 書類の準備:必要書類(4.2参照)をそろえ、窓口で契約申込書と掛金預金口座振替申出書を記入します
- 窓口への提出:委託団体または代理店の窓口に申込書と必要書類を提出します
- 中小機構による審査:提出書類をもとに中小機構が加入資格を審査します
- 契約成立:申込みから2か月程度で、中小機構から「共済契約締結証書」と「加入者必携」が送付されます
- 掛金の納付開始:指定した預金口座から毎月掛金が振り替えられます
4.2 必要書類
加入申込みに必要な書類は、法人と個人事業主で異なります。
| 区分 | 書類 | ポイント |
|---|---|---|
| 法人 | 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本) | 法務局発行から3か月以内の原本 |
| 法人税の確定申告書 | 直近のもの。決算書などの添付書類を含み、税務署に提出したことが分かるもの(e-Taxの受付日時・受付番号の印字や受信通知など。令和7年以降の書面申告は収受日付印がないため、納税証明書(その1)の添付などで代える) | |
| 納税証明書(その1) | 法人税を納付したことを証明するもの。e-Taxの電子納税証明書(印刷)も可 | |
| 個人事業主 | 所得税の確定申告書 | 直近のもの。青色申告決算書または収支内訳書を含み、税務署に提出したことが分かるもの(取扱いは法人と同じ) |
| 納税証明書(その1) | 所得税を納付したことを証明するもの | |
| 共通 | 契約申込書・掛金預金口座振替申出書 | 窓口で記入。GビズIDプライムがあればオンラインで事前作成も可 |
書類は事前に準備しておくとスムーズです。不明な点があれば、申込みをする窓口に問い合わせましょう。
4.3 掛金の納付方法
掛金の納付は預金口座振替が原則で、毎月27日(休業日の場合は翌営業日)に引き落とされます。現金納付やクレジットカードでの納付はできません。前納しない場合、初回の口座振替は原則として申込月の翌々月で、申込月からの掛金がまとめて引き落とされます。加入時に前納する場合に限り、申込月に中小機構の指定口座へ振り込む方法と、申込月の翌々月に口座振替でまとめて引き落とす方法から選べます(契約申込書で選択します)。前納を希望する場合は、あらかじめ窓口に申し出ましょう。掛金を滞納すると、共済金の借入要件(6か月分以上の納付)を満たせなくなったり、12か月以上の滞納で機構解約となったりするおそれがあるため注意が必要です。
5. 共済金の借入れ方
共済金を借り入れるには、取引先の「倒産」が制度上の倒産事由に該当していることが前提です。ここでは、倒産事由と手続きの流れを解説します。
5.1 共済金の借入対象となる「倒産」とは
制度上の「倒産」は、共済契約者の直接の取引先事業者に次のいずれかの事態が生じた場合をいいます。
| 倒産の種類 | 内容 | 倒産日 |
|---|---|---|
| 法的整理 | 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始の申立てがされること | 申立てがされた日 |
| 取引停止処分 | 手形交換所(電子交換所)に参加する金融機関によって取引停止処分を受けること | 取引停止処分の日 |
| でんさいネットの取引停止処分 | でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)に参加する金融機関によって取引停止処分を受けること | 取引停止の日 |
| 私的整理 | 債務整理の委任を受けた弁護士等から、共済契約者に対して支払いを停止する旨の通知がされること | 通知がされた日 |
| 災害による不渡り・支払不能 | 甚大な災害により手形・小切手が不渡りとなること、または電子記録債権が支払不能となること | 手形等の手形交換日または呈示日(でんさいは支払期日) |
| 特定非常災害による支払不能 | 特定非常災害により取引先の代表者が死亡等した場合に、弁護士等から共済契約者に対して支払いを停止する旨の通知がされること | 通知がされた日 |
| (該当しない例)夜逃げ | 倒産の事実確認が困難なため、本制度の倒産には該当しない | ― |
一方で、取引先の「夜逃げ」は、倒産の事実確認が困難であることから、本制度の倒産には該当せず、共済金の借入れはできません。また、上記の事由に該当しても、加入後6か月未満の倒産や、倒産日から6か月を過ぎてからの請求は借入対象外となります。
5.2 借入れの手続き
共済金の借入れは、中小機構所定の「共済金貸付請求書」に、取引先の倒産を証明する書類(破産手続開始決定通知書、取引停止処分の通知など)と、売掛金債権等の存在と金額を証明する書類(請求書、納品書、契約書など)を添えて請求します。中小機構が書類を審査し、貸付けが決定すると指定口座に共済金が振り込まれます。必要書類は倒産事由によって異なるため、事前に中小機構の共済相談室または加入窓口に確認することをおすすめします。
6. よくある質問
6.1 掛金を経費にするのに手続きは必要ですか?
掛金は法人なら損金、個人事業主なら必要経費に算入できますが、自動的に適用されるものではありません。法人は別表十(八)Ⅲと適用額明細書、個人事業主は必要経費算入に関する明細書を確定申告書に添付する必要があるとされています。
6.2 取引先が夜逃げした場合も借入れできますか?
取引先の夜逃げは、倒産の事実確認が困難であることから本制度上の「倒産」には該当せず、共済金の借入れはできないとされています。法的整理の申立てや手形交換所での取引停止処分などが、制度上の倒産事由として挙げられています。
6.3 加入してすぐ解約したら掛金は戻りますか?
納付月数が12か月未満の場合は解約手当金が支給されず、納付した掛金は全額掛け捨てになるとされています。また、納付月数が40か月未満で任意解約した場合も、解約手当金は掛金総額を下回る点に注意が必要です。
7. まとめ

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための公的な共済制度です。取引先が倒産した場合でも、無利子・無担保で共済金を借り入れることで事業資金を確保し、経営の安定を図ることができます。掛金は損金または必要経費に算入できるため、節税対策としても有効です。
一方で、共済金は借入金であり返済義務があること、借入額の10分の1の掛金が消滅すること、解約手当金は課税されること、解約後2年間は再加入しても掛金を損金にできないことなど、注意点も存在します。加入前にメリット・デメリットと制度の仕組みをよく理解し、自社の経営状況に合わせて加入を検討してみてください。制度の詳細や最新情報は、中小機構の経営セーフティ共済のウェブサイト(https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/)で確認できます。
この記事のテーマに関連するサービス


この記事を読んだ方に
記事の内容を自社に当てはめて確認したい方は、30分の無料相談をご利用ください。ご契約をお願いする場ではありません。
無料相談を申し込む(30分・オンライン可)


