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はぐくみ企業年金とは?仕組みと節税メリットを解説

更新日: 2026年10月20日 | カテゴリ: 法人
はぐくみ企業年金。社員の将来に備える福利厚生

「企業年金は大企業だけの制度」と思っていませんか?実は「はぐくみ企業年金」は、業種や規模を問わず、厚生年金に加入している法人であれば導入できる確定給付企業年金です。導入支援会社の資料によると、2026年6月末時点で7,803事業所・145,123人が加入しており、導入事業所の平均加入率は74.2%(2024年10月〜2025年9月導入分)にのぼります。給与の一部を退職金に振り替える「選択制」の仕組みを使うことで、従業員は社会保険料や税負担を抑えながら退職金を準備でき、会社も社会保険料の負担が軽くなる場合があります。この記事では、はぐくみ企業年金の仕組み、メリット・デメリット、導入できないケース、他の退職金制度との違いまでを解説します。

1. はぐくみ企業年金とは

はぐくみ企業年金基金は、2018年に厚生労働大臣の認可を受けて設立された確定給付企業年金(DB)の基金です。あらかじめ給付額の計算方法が決まっている「確定給付型」のため、加入者は将来受け取れる金額の見通しを立てやすいという特徴があります。制度の導入サポートは、基金から委託を受けた株式会社ベター・プレイスが行っています。

1.1 導入できる事業所の範囲

  • 業種を問わず導入可能(一部、風俗営業法の規制対象業種を除く)
  • 厚生年金の適用事業所(法人)であること
  • 全国どこの事業所でも導入できる

※「福祉」という名称ですが、社会福祉事業に限定された制度ではありません。ただし、個人事業主(法人格のない個人事業所)は導入できません。導入を検討する場合は、まず法人化が必要です。

1.2 加入できる従業員の範囲

  • 厚生年金に加入している70歳未満の方
  • 職種・雇用形態を問わない(正社員・パート・役員も加入可能)

2. 「選択制」の仕組み

はぐくみ企業年金の大きな特徴が「選択制」です。

選択制企業年金は今の給与で受け取るか将来の年金給付に備えるかを選択

2.1 給与の一部を「選択給」に振り替える

導入にあたり、STEP1として現在の基本給の一部を減額し、同額を「選択給(前払い退職金)」として新設します。STEP2として、従業員は毎月の選択給について、

  • そのまま給与として受け取る(給与所得扱い=社会保険料・税金の算定対象)
  • 将来の退職金の掛金として積み立てる(退職給付費用扱い=社会保険料・税金の算定対象外)

のどちらかを、自由に選択できます(掛金は1,000円単位、変更は従業員年2回・役員年1回まで可能)。

2.2 掛金の上限

掛金は1,000円から、基本給・役員報酬の20%(月上限40万円)まで設定できます。

2.3 税金・社会保険料が軽減される理由

  • 掛金として積み立てた部分は給与として支給されないため、所得税・住民税の課税対象から外れます
  • 掛金を選んだことで給与が下がり、標準報酬月額の等級が下がれば、社会保険料の負担も軽減されます(等級が変わらない場合は軽減されません)
  • 会社が拠出する基本掛金は、全額を損金に算入できます

2.4 具体的な効果イメージ

基金の資料によると、総支給額26万円(月額)の方が、毎月2万円を掛金として積み立てた場合の試算例は以下のとおりです(令和8年保険料額表・東京都・協会けんぽ・介護保険なしの場合)。

項目銀行に預金する場合はぐくみ企業年金に積み立てる場合
総支給額(月)260,000円260,000円
掛金0円20,000円
税金・社会保険料53,075円48,350円
銀行へ預金20,000円0円
実質手取り額186,925円191,650円

差額は月4,725円、年間で56,700円の実質的な手取りアップ効果があるという試算です。ただし、これは掛金額や標準報酬月額の等級変動幅によって変わるため、あくまで一例です。

はぐくみ企業年金は同じ条件で現在の負担と将来の給付を比較

3. 導入するメリット

3.1 会社側のメリット

  • 掛金は全額損金になるため、給与から掛金への振替で法人税の負担は増えません。等級が下がれば、会社負担の社会保険料も軽くなります(別途、事務費掛金〔1人月490円〕がかかります)
  • 退職金制度の整備による採用力・定着率の向上(福利厚生としてのアピール材料になる)

3.2 従業員側のメリット

  • 元本保証(運用実績により不足が生じた場合は事業主が補てん)に加え、利息分も受け取れる
  • 所得税・住民税、条件によっては社会保険料の負担軽減
  • 退職時だけでなく、休職時・育児休業・介護休業時にも受け取り可能

4. 導入前に知っておきたい注意点

4.1 積立不足が生じた場合は会社が補填

運用実績によって積立金が不足した場合、その不足分(特別掛金)は事業所が負担する義務があります。

4.2 社会保険料が下がることで、将来の給付額も下がる

標準報酬月額の等級が下がると、将来の給付にも影響します。基金の資料では、30歳の方が月2万円を拠出し、標準報酬月額が1等級下がった場合の影響を以下のように試算しています。

  • 老齢厚生年金:1年間積立で年額1,315円減/10年間で年額13,154円減/30年間で年額39,463円減
  • 健康保険の出産手当金・傷病手当金:1日あたり447円減
  • 雇用保険の育児休業給付金:1日あたり333〜446円減(時期による)、介護休業給付金:1日あたり446円減、基本手当(失業手当):1日あたり243円減

さらに、月2万円の拠出を10年間続けた場合、65歳から87歳まで22年間受給すると仮定すると、生涯で受け取る厚生年金の総額は約290,000円減少するという試算例が示されています(国民年金の給付額には影響しません)。目先の負担軽減だけでなく、将来の給付への影響も踏まえて検討することが大切です。

4.3 導入できないケース

以下に該当する場合は、そもそも導入できません。

  • 個人事業主(法人格のない個人事業所)
  • 設立1年未満の法人、または厚生年金適用から1年未経過の事業所
  • 役員のみの法人(厚生年金に加入する使用人兼務役員が2名以上いる場合を除く)
  • 加入対象者が3名未満の法人(役員が厚生年金未加入の場合)
  • 債務超過の企業、反社会的勢力
  • 就業規則・給与規程・育児介護休業規程(法改正対応済みのもの)が未整備の場合
  • 風俗営業法の規制対象業種(接待を伴う飲食店、パチンコ、ゲームセンターなど)
はぐくみ企業年金の導入前に加入対象・財務状況・社内規程を確認

5. 受給の仕組み

5.1 受け取りのタイミングと方法

退職時・休職時(一時金の受給)

  • 退職時:年齢に関わらず、退職時に一時金(退職金)として全額即時受け取りが可能です
  • 休職・休業時:育児休業や介護休職などの際にも、一時金として受け取ることができます(復職まで受取を据え置くことも可能)

老齢給付(年金の受給)※加入者期間20年以上の場合

  • 65歳到達時(在職中含む):年金(または一時金)として受け取ることができます
  • 50歳以上で退職した場合:65歳を待たずに即時受給を選択することも可能です

5.2 転職・退職時の扱い

退職・転職した場合も、要件を満たせば年金資産を持ち運べる場合があります。詳細な手続きは基金の規約によって定められているため、退職前に確認しておきましょう。

6. 他の退職金・企業年金制度との違い

項目はぐくみ企業年金(DB)中小企業退職金共済(中退共)企業型確定拠出年金(企業型DC)
根拠法確定給付企業年金法中小企業退職金共済法確定拠出年金法
加入制限役員も拠出可(厚生年金被保険者に限る)一般業種は常時雇用者300人以下または資本金3億円以下等の事業規模制限あり。役員は拠出不可役員も拠出可(厚生年金被保険者に限る)
拠出額(月)1,000円〜基本給・役員報酬の20%(上限40万円)5,000円〜30,000円の16段階(短時間労働者は特例で2,000円〜)1,000円〜55,000円(2026年12月からは62,000円。DBと併用する場合は、ここから他制度掛金相当額を差し引いた額)
所得税・住民税・社会保険料の軽減選択制採用により軽減可軽減不可選択制採用により軽減可
運用基金が運用(元本保証)機構(勤労者退職金共済機構)が運用加入者本人が運用
受取時期退職時、休職時、育児・介護休業時退職時(掛金納付11ヶ月以下は支給なし、23ヶ月以下は元本割れ)原則60歳以上

中退共は掛金納付期間が短いと元本割れするリスクがある一方、はぐくみ企業年金は選択制による税・社会保険料の軽減効果が期待できる点が大きな違いです。企業型DCも選択制を採用すれば同様の軽減効果を狙えますが、運用リスクを加入者自身が負う点が異なります。どの制度が適しているかは、会社の規模や目的によって異なるため、専門家に相談しながら選ぶことをおすすめします。

7. 導入の流れ

  1. 個別相談・効果シミュレーションを受ける
  2. 導入する掛金の上限額・対象者の範囲を決定する
  3. 就業規則・給与規程・育児介護休業規程の整備
  4. 基金への加入手続き、従業員への説明会

導入を検討する際は、社会保険料や税負担への影響を事前にシミュレーションした上で判断することが重要です。

8. よくある質問

8.1 個人事業主でもはぐくみ企業年金は使えますか?

はぐくみ企業年金は厚生年金の適用事業所である法人が対象で、法人格のない個人事業所は導入できないとされています。導入を検討する場合は、まず法人化が必要になります。設立1年未満の法人なども対象外として挙げられています。

8.2 掛金にすれば社会保険料は必ず下がりますか?

掛金として積み立てた部分は給与として支給されないため所得税・住民税の課税対象から外れます。一方、社会保険料は給与が下がって標準報酬月額の等級が下がった場合に軽減されるもので、等級が変わらなければ軽減されないとされています。

8.3 掛金を積み立てると将来の年金は減りますか?

標準報酬月額の等級が下がると将来の給付にも影響するとされ、基金の試算例として、月2万円の拠出を10年続け65歳から87歳まで受給した場合に、生涯の厚生年金総額が約29万円減少する例が示されています。国民年金には影響しないとされています。

9. まとめ

はぐくみ企業年金は、法人であれば業種を問わず導入できる確定給付企業年金です(個人事業主や設立1年未満の法人などは対象外)。「選択制」の仕組みを使うことで、従業員は税負担を抑えながら退職金を準備でき、会社も掛金を全額損金に算入しつつ、等級が下がれば社会保険料の負担を軽くできます。一方で、社会保険料が下がることによる将来の年金・手当額への影響や、積立不足時の補填義務といった注意点もあるため、メリット・デメリットの両方を理解した上で、導入を検討しましょう。

従業員の処遇や会社の資金計画を考える際は、賃上げ促進税制の要件と控除率、経営セーフティ共済の仕組みと注意点も参考になります。制度ごとの目的と条件を確認しながら検討しましょう。

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